希望のTシャツを販売するに当たって、
善意の押し売りではないかと意見をいただいた。
どきっ、とした。
この未曾有の大災害で、
日本中の人たちが寄付をしている。
そんな中であえて売るという行為をして
募金を集める必要はあるのか。
売るという行為に
見えない圧力を感じる人もいる。
それが押し売りになる。
確かにそうかもしれない。
悩んだ。
女子高生が駅前で
一生懸命募金活動をしている前を
知らん顔をして通り過ぎることに
どこか抵抗を感じることと同じだ。
そもそも、なぜこうしたのか
改めて考えた。
2004年にあった福井の豪雨災害、
ぼくは復興ボランティアに参加した。
想像以上の悲惨な現場に驚いた。
自宅に戻った後、何かできないかと思い、
仲間とTシャツを作って募金活動をした。
そして売り上げとTシャツ数枚を
ボランティア団体に寄付した。
役には立ったと思う。
一方では、自分自身のそうした行動に満足している
どこか舞い上がっている自分がいた。
不謹慎という言葉が頭をよぎる。
デザイナーとしてできることは何かを考える。
ある人は、ダウンロード自由の節約ポスターをデザインし、
ある人は、援助物資の仕分けシールをつくっていた。
いずれも必要なものをシンプルにデザインし、
コミュニケーション効率を高める優れたものだった。
自分が得意なことで貢献できることすればいい。
営業マンは人と人を結び
コピーライターはその言葉を考え
フォトグラファーは記録する。
ぼくは企画して形にしていく
いろんな力も集めれば大きくなっていく。
復興にはとてつもない時間が必要だろう。
2004年の新潟中越地震
その2年後に行われた越後妻有大地の芸術祭に行った際、
駅前には、仮設住宅で生活している人たちがいた。
驚いた。
離れたぼくにはすでに過去の出来事になっていた。
この度の震災について、
現場に目を向け続けることを忘れないようにしなければならない。
そのために、できることを考えていこうと思う。